2015.12.03 Thursday
日本の紙
今回は2冊の本を紹介したい。
日本の和紙の歴史をまとめたもので、
著者は、英文学、随筆家であり、和紙の研究家でもある寿岳文章。
戦中の昭和19年2月10日に発行した。
薄い冊子ではあるものの、民芸運動家でもある彼は芹沢銈介の協力ものもと、和紙の見本を貼込むなど
凝った作りにしている。
中表紙
8枚もの本物の和紙が貼込まれている。
終戦の年、昭和20年に第2版、そして昭和22年に3版を刷り直すのだが、
戦争によって原版やフィルムを失い、同じものを作れなくなった。
初版では和紙の出来るまでのプロセスを写真で紹介しているが、
再販は、芹沢銈介の型染紙漉屏風の絵づらに差し替えられ、貼込まれる和紙も3枚のみとなる。
戦後間もなく出版された版の表紙。
差し替えられた屏風の絵づら。
このあとがきを読んでもらいたい。
たいへんな苦労が伝わる。
この2冊を見比べると、たしかに風情は加わっている。
体裁は変われども、和紙を愛した著者の気持ちは美しいままにとどまっている。